「本人がそう言っているので…」は正しい? ― 子どもの“本音”

「うちの子が“やりたくない”って言ってるので」
「“行かない”って本人が言ってるので」
これは、保護者の方からよく聞くフレーズのひとつです。

もちろん、お子さんの気持ちを大切にする姿勢はとても素晴らしいこと。
でも、その言葉の“背景”まで見えているかどうかで、関わり方の質は大きく変わります。


思春期の「やりたくない」は本心だけじゃない

中学生になると、自分の気持ちをある程度言葉にできるようになります。
でも同時に、

  • 本当の気持ちを隠したり
  • 言いにくいことをぼかしたり
  • やらない理由をもっともらしく言ったり

ということも自然と身につけていきます。

たとえば、

「習い事をやめたい」= 本当は人間関係でつまずいている?
「塾に行きたくない」= 宿題をしていないから?
「受験はしたくない」= 不安でいっぱいだけど言い出せない?

子どもの言葉の“表面”だけをすくってしまうと、
大切なサインを見逃してしまうことがあります。


「本人が言っているから」で止めてしまうと…

「本人がそう言うから、無理には勧めませんでした」
「嫌がってるので、それ以上話はしていません」

こんなふうに、一歩引いてしまう保護者の方もいます。
でも、“本音”に気づいてほしくて出しているサインだったとしたら?

子どもが本当に求めていたのは、
「無理にやらせること」ではなく、
「気持ちをわかってもらうこと」や「一緒に考えてもらうこと」かもしれません


尊重する ≠ そのまま受け入れる

子どもの気持ちを“尊重”するとは、
「好きにさせること」ではなく、
「気持ちを受け止めた上で、必要な言葉をかけること」。

たとえば、こんなふうに声をかけてみてください:

「そう思うんやね。でもなんでそう感じたんか、もうちょっと聞かせてみて?」
「嫌な気持ちもあるよな~。ほな、他にできる方法ってあるかな?」

子どもが自分の気持ちを“ことばにして整理する”機会になりますし、
「親は自分の味方なんだ」と感じられる時間にもなります。


自立には、“自分の気持ちと向き合う力”が必要

私が目指したいのは、
「言われたからやった」「嫌だからやめた」ではなく、
「どうしたいかを考えて、自分で選ぶ力」を育てること。

そのためには、「どうしたいの?」「なんでそう思ったの?」と
丁寧に問いかけてくれる大人の存在が不可欠です。

お子さんが迷ったとき、後ろからそっと背中を支えてくれるような、
そんな関わりができるといいですね。


おわりに

本人がそう言っているから…と判断をゆだねることは、
一見“尊重している”ように見えて、実は“放任”になっていることもあります

子どもが何を感じて、どうしたいと思っているのか。
その奥にある「本当の声」に、ちょっとだけ耳をすませてみませんか?